【子犬の社会化と基本トレーニング】社会化期における適切なしつけ方法と基本コマンドの教え方

このコラムの執筆者
獣医師 今枝 奈緒美
日本獣医生命科学大学卒。
日本獣医皮膚科学会所属。
勤務医として臨床に携わる傍ら、名古屋市と東京都の2つの動物病院にて皮膚科外来を担当。主に犬猫のアトピー性皮膚炎やアレルギー疾患の診療を得意とする。
ペットの皮膚トラブルに悩む飼い主様向けに、セミナー登壇・セミナー主催・皮膚科相談・関連商品の販売などを行う。
- はじめに:なぜ社会化が重要か
- 社会化期とは?
- 社会化期にやるべきことリスト
- 基本トレーニングの始め方
- おすわり
- まて
- おいで
- やってはいけないNG行動
- まとめとアドバイス
1. はじめに:なぜ社会化が重要か

子犬の一生において、生後数か月間は「社会化期」と呼ばれる特別な時間です。この時期は脳や神経系が急速に発達し、「初めて出会った物事を安全で大丈夫なもの」と認識する力が最も高まっています。
逆に、この時期に十分な社会化が行われないと、将来、人や他の動物、環境の変化に対して過度な恐怖や警戒を示し、吠えや咬みつき、過剰な逃避行動などの問題行動につながることがあります。これらは成犬になってから修正するのが難しく、飼い主と犬との生活の質(QOL)にも影響します。
臨床の現場を見ていても、「病気の治療と同じくらい、予防的なしつけ・社会化が犬の幸せを左右する」と実感します。
健康な体だけでなく、健やかな心を育むために、社会化期のしつけは欠かせません。
2. 社会化期とは?
「社会化期」とは、子犬が新しい体験を“安心できるもの”として受け入れやすい時期を指します。
一般的には生後3週〜14週ごろがピークとされ、この期間に出会った音・人・動物・環境は、将来もポジティブに受け入れやすくなります。
- この時期の子犬はとても柔軟で、
- はじめて会う人や犬に親しみやすく接する
- 見慣れない物や音にもすぐ慣れる
- 遊びを通して学ぶスピードが速い
といった特徴があります。
一方で、この時期を過ぎると慎重さや警戒心が強まり、“慣れるまでに時間がかかる”ようになっていきます。
そのため、「社会化のゴールデンタイム」とも呼ばれるこの数週間に、多様な経験を楽しく、無理なく積ませることがとても大切です。
3. 社会化期にやるべきことリスト
社会化期の子犬にとって大切なのは、日常生活の中で少しずつ新しい経験を“楽しいもの”として積み重ねていくことです。無理に詰め込む必要はなく、遊びやお散歩の延長で取り入れていきましょう。
日常で体験させたいことの例
- 人との出会い:家族以外の大人や子どもに優しく触ってもらう
- 音や物への慣れ:掃除機・チャイム・車のエンジン音などを少しずつ体験
- 外の環境:公園・住宅街・車通りのある道など、場所を変えて散歩する
- 動物との関わり:他の犬や猫を遠目に見たり、同じ月齢くらいの犬と遊んだりする
- 体に触れられること:耳や足先、口の周りを触られることに慣れる(将来のケアや診察に役立ちます)
💡特にやっておくと良いのが、動物病院とのポジティブな関係づくり
かかりつけの動物病院にも、「診察」だけでなく可愛がってもらうための短時間の訪問をしてみましょう。
ワクチンや注射など“ちょっと嫌な体験”だけが記憶に残ると、病院嫌いになってしまう子もいます。
「病院に行くと優しいスタッフさんに会えて、なでてもらえて、おやつももらえる」という印象を子犬のうちに持たせることで、動物病院=楽しい場所として前向きに通えるようになります。
4. 基本トレーニングの始め方
社会化期の子犬は学習意欲が高く、楽しく遊びながらしつけを覚えていけます。
ここでは、生活の基礎になる「おすわり」「まて」「おいで」の3つのコマンドについて、やり方の一つを紹介します。
うまくいかない場合は無理に続けず、別の方法に切り替えるのも良い練習です。決して“できないこと”を叱らないことが大切です。
■ おすわり
最も基本的で、他のコマンドの土台にもなる合図です。
手順の一例
1. ごほうび(フードやおやつ)を手に持ち、子犬の鼻先に近づける
2. おやつを頭の上から後方にゆっくり動かす
3. 目で追った子犬が自然にお尻を床につける → その瞬間に「おすわり」と声をかけてごほうびを与える
4. 数回繰り返し、合図と行動を関連づける
ポイント:押さえつけず、自然に座った瞬間を褒めるのが成功のコツ。
■ まて
衝動をコントロールする練習になります。
手順の一例
1. 子犬を「おすわり」させる
2. 手のひらを見せながら「まて」と言う
3. 1〜2秒じっとできたらすぐにごほうびを与える
4. 少しずつ時間や距離を伸ばしていく
5. 最後は「よし」などの解除の合図で動いていいことを教える
ポイント:最初は数秒から始める。少しずつ成功体験を積み重ねましょう。
■ おいで
散歩や日常生活の安全のために必須のコマンドです。
手順の一例
1. 子犬から少し離れ、名前を呼んで「おいで」と言う
2. 来ようとしたら、体を低くして手を広げるなど“歓迎のサイン”を出す
3. 来たらすぐにごほうび+たくさん褒める
4. 慣れてきたら、公園や室内の広い場所でも練習する
ポイント:おいで」を必ず“良いこと”につなげる。叱るために呼ばないことが鉄則。
5. やってはいけないNG行動
社会化やトレーニングの際に、飼い主さんがついやってしまいがちな“NG行動”があります。これらは学習を妨げ、子犬との信頼関係を損ねる原因になるため注意しましょう。
■ よくあるNG行動
-
できないことで叱る
子犬はまだ学習の途中です。失敗は当たり前。叱るよりも「どうすれば成功するか」を工夫しましょう。 -
タイミングの悪い叱り方
トイレの失敗など、時間が経ってから叱っても犬は理解できません。叱ることで“人が怖い”と学んでしまうことも。 -
名前を呼んで叱る
「〇〇!」と名前を呼んでから叱ってしまうと、名前=嫌なことという記憶が残り、呼び戻しのトレーニングがうまくいかなくなります。名前は常に“良いことがある合図”として使いましょう。 -
強制的に慣らす
怖がっている子犬を無理に抱えて人混みに連れて行く、体を押さえつけて触るなどは逆効果。かえって恐怖心を植え付けてしまいます。 -
力で制御しようとする
「押さえ込めば言うことを聞く」「大きな声で威圧すれば従う」と思いがちですが、これは一時的に動きを止めるだけで、学習にはつながりません。長期的には恐怖や不信感を育ててしまい、問題行動を悪化させることもあります。
6. まとめとアドバイス
子犬の社会化と基本トレーニングは、将来の犬の性格や行動に大きな影響を与えます。今回コラムのまとめは
- 社会化期(生後3〜14週)は一生に一度のゴールデンタイム
- 日常生活の中で多様な経験を“楽しいもの”として積ませることが大切
- 「おすわり」「まて」「おいで」などの基本コマンドは、叱らず成功体験を積ませることがポイント
- NG行動(名前を呼んで叱る、強制的に慣らす、力で制御するなど)は避ける
という点が重要です。
子犬のしつけは「完璧にやること」よりも、少しずつ楽しく続けることが何より大切です。小さな成功体験を一緒に積み重ねることで、飼い主と犬との絆はどんどん深まっていきます。
「しつけ=厳しいもの」ではなく、“一緒に遊びながら学ぶ時間”と捉えてみてください。そうすることで、愛犬にとっても飼い主にとっても、毎日の暮らしがより豊かで安心できるものになるでしょう。
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